シリーズAまでは、CEOの人脈とリファラルでなんとか採用できていた。

でもシリーズBを超えたあたりから、急に採用が回らなくなる——。

これは多くのスタートアップが経験する「採用の壁」です。私はこれまで、シリーズA〜Cのスタートアップの採用を支援してきましたが、このフェーズで苦しむ企業には共通するパターンがあります。

この記事では、なぜシリーズBで採用が難しくなるのかを構造的に整理し、具体的な3つの打ち手を紹介します。


シリーズAまでは「とにかくエンジニアを3人」「営業を2人」といったシンプルな採用でした。

シリーズBになると、事業の拡大に伴い、必要なポジションが急増します。

1人の人事が、これだけのポジションの要件定義・母集団形成・選考管理を同時にこなすのは、物理的に不可能です。

シリーズAでは、CEOが自ら候補者を口説き、ビジョンで人を惹きつけることができました。

しかし、シリーズBでは採用人数が10名を超えてきます。CEOが全候補者と面談するのは現実的ではなくなり、「組織としての採用力」が求められるようになります。

候補者の期待値も変わります。「面白そうなスタートアップ」だけでなく、「組織として成熟しているか」「入社後のキャリアパスは明確か」といった点を見るようになります。

シリーズAまでの採用は、創業メンバーの人脈からのリファラルが大半を占めていることが多いです。

しかし、この鉱脈には限りがあります。シリーズBで10〜20名を採用しようとすると、リファラルだけでは到底足りず、新しいチャネルを開拓する必要が出てきます。

ここでダイレクトリクルーティングやエージェント活用の経験がないと、採用が一気に止まります。


「採用はエージェント任せ」という企業は少なくありません。しかし、エージェント経由の採用には以下のリスクがあります。

バランスの良い採用チャネル構成の一例:

チャネル 割合目安 特徴
ダイレクトリクルーティング 40% 高い。コスト効率が良い
リファラル 30% カルチャーフィットが高い
エージェント 20% ハイレイヤー・急募向き
自然応募(Wantedly等) 10% ブランディング効果あり

ある支援先では、エージェント依存の状態から1年かけてリファラル・ダイレクト経由の決定割合を70%まで引き上げました。採用コストは大幅に下がり、候補者の質も向上しています。


シリーズBでは、「採用がうまい人がいるから回っている」状態から、「誰がやっても一定の品質が出る仕組み」に移行する必要があります。

具体的に型化すべきポイント:

スカウト - ターゲットの検索条件(職種×経験年数×技術スタック) - スカウト文面のテンプレート(構造は固定、カスタマイズ部分だけ変える) - 送信曜日・時間帯のルール

面接 - 各ステージの評価基準(スキル / カルチャー / ポテンシャル) - 質問リストの標準化 - 面接官トレーニングの実施

候補者コミュニケーション - 各ステージの連絡テンプレート - 選考スピードのSLA(例:書類選考は2営業日以内) - お見送り時のフィードバック方針

これらを一度つくってしまえば、人事が1人増えたとき、あるいは外部のリクルーターを入れたときに、すぐに立ち上がれます。


シリーズBのスタートアップは、限られたリソースで最大の成果を出す必要があります。採用のすべてを社内で完結させることが正解とは限りません。

外部リソースを入れるべきかどうかの判断基準:

重要なのは、外部リソースを「丸投げ先」にしないことです。

社内の人事チームと外部リクルーターが同じSlackチャンネルに入り、同じ採用会議に出席し、同じKPIを見る。この距離感で動けるパートナーであれば、外部リソースでも社内と同等の成果を出せます。


シリーズBの採用の壁は、ほぼすべてのスタートアップが直面する構造的な課題です。

  1. チャネルを分散させる:エージェント依存から脱却し、ダイレクト・リファラルを強化する
  2. 型をつくる:スカウト・面接・コミュニケーションを仕組み化し、属人性を排除する
  3. 外部リソースを正しく使う:丸投げではなく、チームの一員として動けるパートナーを選ぶ

「壁」は、正しい打ち手を打てば乗り越えられます。大事なのは、壁にぶつかってから慌てるのではなく、シリーズBの調達が決まった時点で採用の準備を始めることです。