シリーズBを超えたあたりから、採用の難易度は一気に上がります。
事業が伸びているのに、人が足りない。エンジニアの採用計画は10名。でも人事は2人——。
こんな状態のスタートアップは少なくありません。実際、私がこれまで支援してきた企業の多くが、まさにこのフェーズで採用の壁にぶつかっていました。
この記事では、人事2〜3名体制のスタートアップが、エンジニア採用を属人化させず「仕組み」として回すために何をすべきか、3つのポイントに絞ってお伝えします。
エンジニア採用においてダイレクトリクルーティングは必須チャネルです。しかし、1通ずつ候補者のレジュメを読んでカスタマイズして送る——これを人事が全件やっていたら、週に送れるのはせいぜい30〜50通。
返信率が5%なら、週に2〜3名の返信。そこから面談・選考に進む候補者はさらに絞られます。
効果的なスカウトには構造があります。
- 冒頭:なぜあなたに声をかけたのか(候補者の経歴への着目)
- 中盤:自社のどこが候補者にとって魅力的か(ポジションの訴求)
- 末尾:カジュアル面談への導線(心理的ハードルを下げる)
この構造を「テンプレート+カスタマイズ部分」に分離すれば、現場のエンジニアや経営陣にもスカウト送信を依頼できます。
実際、ある支援先ではこのアプローチでスカウト返信率を4.3%から14.2%に改善しました。送信数を増やしながら質も上げる。それが「型化」の力です。
多くのスタートアップが、エージェント(人材紹介会社)に求人票を渡して「いい人がいたら紹介してください」と伝えています。
しかし、エージェントは1人のコンサルタントが何十社もの求人を抱えています。ただ待っているだけでは、あなたの会社の優先度は上がりません。
- 求人票の質を上げる:ポジションの魅力だけでなく、「このフェーズでしか経験できないこと」を明記する
- 定期的に情報を共有する:資金調達、プロダクトのアップデート、組織の変化を伝え続ける
- 推薦理由にフィードバックする:紹介された候補者について「なぜ合う / 合わない」を言語化して返す
こうした地道なコミュニケーションが、エージェントの優先順位を変えます。ある企業では、エージェント依存度を下げつつ、紹介の質を上げた結果、1年間で20名以上のIT人材の採用に成功しました。
エンジニア採用が難しい理由のひとつは、優秀な候補者ほど複数のオファーを持っていること。年収700万円以上のミドルレイヤーになると、常に2〜3社を比較検討しています。
このとき差がつくのは、年収でも知名度でもなく、選考プロセス全体の体験です。
- 初回面談:会社説明ではなく、候補者のキャリア課題を聞くことから始める
- 面接間の空白:次のステップまでの期間を最短化し、待たせない
- オファー面談:条件提示だけでなく、「入社後の最初の3ヶ月で何をするか」まで伝える
- 内定〜入社の期間:チームメンバーとのカジュアルなランチや、Slackへの早期招待
ある支援先では、この候補者体験の設計によってエンジニア職種の内定承諾率を30%から100%に改善しました。
人事2人のスタートアップでも、エンジニア採用を回すことはできます。ただし、「がんばる」のではなく「仕組みにする」ことが前提です。
- スカウトの型をつくり、送信を分担する
- エージェントとの関係を能動的にマネジメントする
- 候補者体験を設計し、内定辞退を防ぐ
すべてを一度にやる必要はありません。まずは、最もボトルネックになっているところから手をつけてみてください。